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【書評】仕事の意義を見直すきっかけになる「迷子の王様: 君たちに明日はない5」

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垣根涼介さんの「君たちに明日はない」シリーズの5作目です。

垣根涼介さんは「ワイルド・ソウル」とか「ゆりかごで眠れ」などのハードボイルドなアクション作品が多いのですが、この小説はかなり移植でサラリーマンを描いています。

仕事のあり方、生き方について今のままでいいのかなと考えるきっかけになる作品です。

実際のビジネスの現場を描いた経済小説はいろいろと読んできましたが、この「君たちに明日はない」シリーズは他の小説と全然違う読後感です。

経済小説というと、たいていすごく仕事のできる能力の高いビジネスマンが、様々な課題を解決して、ビジネスや組織を変えて成功に導いていく流れが多いです。

その定番から完全に外れています。いい意味で他と違っています。

 

あらすじ

あまりネタバレはしないように紹介します。

「君たちに明日はない」の主人公の村上真介は、リストラのための面接を代行する日本ヒューマンリアクトという会社に勤務している首切りのための仕事をしています。

リストラのための面談が中心で物語は進んでいきます。主人公の勤務する会社では、指名解雇はできないという日本の法律があるため企業側からクビを言い渡せない従業員に、最大で3回まで面接して、目標に達するまで自主退職してもらう仕事をしています。

辞める人は退職金の上乗せなどのケアがあり、残ると決めた人でも企業の業績が悪すぎるので給料が下がり今後も期待されていない状況です。

そんなシチュエーションで残る人もいれば辞める人もいます。

 

化粧品ブランド、メーカー、本屋など、様々な業績が悪化した企業で面接を受ける人たち1人1人が、こんな人いるかもなと感じるリアリティがあります。

世の中にきっと同じようなシチュエーションの人がいて、人生の岐路に立って悩んで意思決定しているんだろうなと想像できます。多くの人の生き方を追体験できるのがこの小説も魅力です。

なぜ仕事を続けているのか

人がどう仕事を選び、どんなことにやりがいを感じていて、なぜ働き続けることができるのか、そんな人生模様があまり小説っぽくなく誇張されることなく描かれています。

人生で就くことのできる仕事はすごく限られていますが、とにかく納得の行く生き方を選ぶために各自がもがいています。

面接を受けて解雇される側は、最初は自分の中の基準すらわかっておらず、進退を決め兼ねているのですが、3回の面接の合間に自分の親しい人たちと相談したり、自問自答を繰り返したりすることで結論を出します。

長年勤務した会社と離れることになるという人生の大きな岐路に差し掛かっているわけで、みんなが悩むのですが、このプロセスがとても丁寧に説明されていて、結論、つまりなぜ辞めることにしたか、継続することにしたかの話のオチがすごく自然です。

小説なのに、突拍子もない結論になったり、突然決めたりといったことなく、そこがこの作品の面白いところです。

5作目で終わってしまって残念

シリーズ1作目で山本周五郎賞という有名な賞を獲得している「君たちに明日はない」ですが、5作目で完結してしまいました。ドラマやマンガにもなるほど人気を博していたのに早い完結となりました。

これからも継続するものだと思っていたので残念です。

転職を考えている人や、会社の業績や雰囲気が悪くなってきて働き続けられなくなりそうな人は読んでみると何か発見があるでしょう。

また、今の仕事に満足している人も、多くの人のエピソードに触れると、他業界のことがわかりますし、他の人との生き方の違いを意識することになるのでオススメです。

 

迷子の王様: 君たちに明日はない5 (新潮文庫)

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