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書評「再起動 リブート 斉藤徹」ベンチャー経営者の苦悩と楽しみが詰まったノンフィクション

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再起動 リブート―――波瀾万丈のベンチャー経営を描き尽くした真実の物語」 はフレックス・ファームループス・コミュニケーションズを立ち上げた斉藤氏が自身の経験をまとめたノンフィクションです。ベンチャーに興味のある人なら読んでおいて損はない良著です。

斉藤氏のブログはソーシャルメディアへの知見が豊富で、とても参考になるので以前から良く拝見したので興味を持って読んでみました。

 

ベンチャー経営の醍醐味であるスピード感や様々な新しいことが押し寄せてくるという面白さが伝わってきます。

 

この本では失敗談もふんだんに盛り込まれていて、それも参考になります。裏切り、裁判、資金調達での失敗など、起業家が陥ることの多いポイントがたくさん含まれています。

胃が痛くなったり、不安で夜まともに眠れなくなったりするようなスタートアップの経営者ならではピンチの話がたくさん盛り込まれています。また、濃密で充実した時間を過ごせるという起業ならではの楽しさも伝わってきます。

 

語り口が誠実というか、カッコつけることなく誇張せずに書かれているのが印象的でした。自分たちを盛らずに見せるだけじゃなくて、経営幹部候補の勧誘のために一緒にキャバクラ行って説得したとか、そんなことまで書いちゃうんだという内容が含まれてました。

以下失敗事例や良いと思った部分についてのメモです。

 

売上急減で一気に資金繰りが悪化

ダイアルQ2で一気に売上を伸ばすも市場環境が激変して、すぐに資金繰りが悪くなってしまった。固定費を上げただけではなく、顧客から預かっていた保証金などもすべて運転資金に回してしまっていた。

バブルとダイアルQ2の時代の波に乗って一気に伸びたのを実力と勘違いしてしまった。

会社を食い物にする金銭感覚のおかしなコンサル

資金繰りを改善し、なんとか倒産を回避するために連れてきた岩郷氏というコンサルタントが、最初は想定どおりの活躍を見せるが、次第に個人のマンションや高級外車を会社の経費で買うようになってきて、会社を食い物にしはじめる。

袂を分かつために事業の大部分を無償で譲渡する形で縁を切る。 

社内に宗教が広まり教団に横流しされる

数名の信者を入社させてしまった結果、社内に宗教が広まり、数百万円分の機材をその教団に横流しされる。

それが発覚して、数名にクビを言い渡した結果、合計10名ほどがまとめて辞表を出してきた。一気に退職されて業務がスムーズに進まなくなった。 

倒産しそうになるも事業売却をして生き残る

資金繰りであてにしていた日本リースという会社が倒産して、もう駄目かと思ったときに、たまたま社内から事業売却のアイデアが出てきて、開発部門を他社に売ることで倒産を免れる。 

資金調達時の契約の仕方の失敗で実権がなくなる

大手企業3社から資金調達するものの、契約書の内容が相手に有利なものになっており、実権を株主になったその3社に握られてしまった。

しかも業績悪化後の責任を取りたくないため、斉藤氏を解任する動きをしはじめた。

追い打ちをかけるように第一勧業銀行(今のみずほ銀行)が自社株を担保に貸してくれていた個人向け融資3億円を貸し剥がそうとしてきた。

株式の売却などで3億円を返そうとするも、会社の状態が悪いときに売られてしまうと株価が下がり、既存の株主が困るということで身動きがとれない状態になった。

結局辞任することになった。

その後借金は株式を売却して部分的に返済し、半分の1.5億は債権回収機構にまわして、500万円で買い取りをした。

赤字の大型開発案件で資金流出

大株主である会社から非常に大きな受託開発案件を受注したものの、想定していたよりもはるかに工数が大きくなってしまい、大赤字に。

途中で開発を委託していた会社が突然裏切ってきて、裁判沙汰になる。

京都と東京で競った結果チームがバラバラに

別の社長を採用して、会長として仕事をしていたところ、東京と京都の開発チームがそれぞれいがみ合うようになってしまった。

2つの拠点にそれぞれ開発させたものをコンペさせて、勝ったほうを採用するという流れになり、負けたほうのチームが一気に退職。

社長を採用したことで、口出ししないほうが良いと遠慮してしまったのが人間関係がこじれる原因になった。

失敗を繰り返した先に見たものは

散々失敗を繰り返して、著者は以下のような考えにいたります。

この本の最終的な結論とも言える部分です。

事業を成長させ、競争に打ち勝ち、ナンバーワンに登り詰める。僕にはできなかった堂々たる勝ち組の生き方だ。いつの時代も、リーダーの征服欲が世の中の仕組みを変革し、時として社会をよくしてきた。神の見えざる手という、資本主義におけるエネルギーの源泉もそこにある。起業家になってから、僕がずっと描いていた夢だった。
しかし、その夢の先に、僕の幸せはあったのだろうか。財産、名声、権力。外部の世界に幸せを求めれば、奪い合いは果てしなく連鎖してそこに僕の心の喜びはあるのだろうか。地を這うような失敗経験から得たお金よりも大切なもの。それは心の平穏、仲間や顧客の笑顔、社会貢献の実感、そして僕自身の成長だった。僕は知らないうちに、自分の感覚が麻痺していたことに気がついた。僕の幸せはもっと身近なところにあったのだ。 p.260

足るを知るという状態に至り、経営方針を変えたようです。

リスクをとっていくスタイルがスタートアップの特徴ですが、そうではなくて着実に成長をしていく中小企業を目指すのも生き方としてありだと思います。

どちらが正解ということもなく、好きなほうを選べばよいのではないでしょうか。

 

まとめ

ベンチャー、スタートアップで資金調達して一気にビジネスを拡大していこうという志向を持っている人は読んでおくと多くの気付きがあるはずです。

経営や財務の仕事をしている人は、読んでおくとありがちな失敗を避けることができるようになるかもしれません。

また、会社を経営している人だけでなく、仕事に本気で真面目に向き合ってストレスで眠れなくなったり、体調が悪くなったりしたことがある人は、きっと共感する部分が多くあります。

最後に、一番印象に残った部分を引用して終わります。

僕はようやく自覚した。今起きているトラブルは、すべて僕の甘さや判断ミスが原因であり、もとをたどると僕自身の見栄や焦り、未熟さ、恐怖心から来たものだった。フレックス・ファームの経営難という現実は、それらが積み上がった結果だった。

目の前にある現実は限りなく厳しい。あたかも何重にも固く絡まった糸の玉のようだ。

だが、それらは僕自身が編んでいった糸なのだ。どれだけ絡まった糸の玉でも、一本一本、丹念に選り分けていけば、必ず解きほぐすことができるはずだ。そこから目を背けずに、自分でコントロールできることに焦点を絞って、冷静に次の一手を踏み出そう。この苦難はきっと、僕を成長させるために神様が与えてくれた「神のパズル」なのだ。p.77

 

再起動 リブート―――波瀾万丈のベンチャー経営を描き尽くした真実の物語

再起動 リブート―――波瀾万丈のベンチャー経営を描き尽くした真実の物語